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古田 琢哉
医学物理, 37(3), p.177 - 180, 2017/00
放射線感受性のある化学物質を含む水溶液をゲル化させたゲル線量計は、照射放射線による線量分布を三次元で測定できるツールである。このゲル線量計を用いて、粒子線治療に即した状況での生体物質中での線量分布を実測した研究について解説する。この研究では実測結果を粒子・重イオン輸送計算コードPHITSを用いたシミュレーションの結果と比較検証することで、現状の粒子線治療モンテカルロシミュレーションの精度を調べた。不均質な生体物質中を通過することで形成された実測の複雑な飛程端形状を2mm程度の違いの範囲でシミュレーションが十分再現することが示された。また、ゲル線量計が三次元の線量分布を可視化できる優れたツールであり、現状の計算シミュレーションの精度検証の他、将来的に治療ビームの品質保証等の用途に使用できる可能性が分かった。
廣木 章博; 山下 真一*; 木村 敦; 長澤 尚胤; 田口 光正
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 365(Part B), p.583 - 586, 2015/12
放射線架橋ヒドロキシプロピルセルロースゲルと2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレートなどのメタクリル酸エステルモノマーから調製したポリマーゲル線量計に150MeV/uヘリウム線、290MeV/u炭素線、500MeV/u鉄線を照射すると、透明だったゲル線量計は白くなった。照射したポリマーゲル線量計の吸光度は、10Gyまでの線量増加に伴い増加した。また、吸光度は、線量率増加に伴い低下した。線量率一定で照射サンプルの吸光度を比較すると、ヘリウム線,炭素線,鉄線の順で低下した。これは、線エネルギー付与(LET)の変化と一致した。LETの増加にともない、重合の開始剤となるOHラジカルや水和電子の濃度が低下し、白濁因子となるポリマーの生成が抑制されたためと考えられる。このように、ポリマーゲル線量計は、線量,線量率やLETに依存した白濁化を示すことが分かった。
廣木 章博; 山下 真一*; 田口 光正
Journal of Physics; Conference Series, 573(1), p.012028_1 - 012028_4, 2015/01
被引用回数:4 パーセンタイル:78.9(Engineering, Biomedical)放射線橋かけヒドロキシプロピルセルロース(HPC)ゲルを母材とするポリマーゲル線量計の放射線感度向上を目的に研究を行った。電子線照射により作製したHPCゲルを放射線検出液(2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(9G)、テトラキスヒドロキシメチルホスホニウムクロリド(THPC)を含む水溶液)に浸漬後、真空パックすることでポリマーゲル線量計を作製した。線照射による白濁度合いは観測波長660nmの吸光度から評価した。ポリマーゲル線量計は、1Gyで白濁し、10Gyまでの線量に対して吸光度増加を示した。単位線量あたりの吸光度増分である放射線感度は、THPC濃度に依存し、HEMA 2wt%, 9G 3wt%, THPC 0.40wt%で約0.06Abs.Gyに達することが分かった。
廣木 章博; 山下 真一*; 木村 敦; 長澤 尚胤; 田口 光正
no journal, ,
電子線照射により作製したヒドロキシプロピルセルロースゲル母材に、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、テトラキスヒドロキシメチルホスホニウムクロリドから成る放射線検出液を含浸し、ポリマーゲル線量計を作製した。作製したゲル線量計に150MeV/uヘリウム線,290MeV/u炭素線,500MeV/u鉄線を照射した結果、ゲル線量計の吸光度は10Gyまでの線量増加に伴い増加した。0.1-6.8Gy/minの線量率範囲で、トータル5Gy照射したサンプルを比較すると、吸光度は線量率が高いほど低くなることが分かった。また、ヘリウム線, 炭素線, 鉄線の順に吸光度は低下し、線エネルギー付与(LET)依存性を示すことが分かった。これは、高LETほど飛跡でのラジカル再結合・不均化の停止反応が起こり、ポリマー生成量が減少したためと考えられる。
廣木 章博; 山下 真一*; 田口 光正; 村上 健*
no journal, ,
放射線橋かけ技術により作製したヒドロキシプロピルセルロースゲル母材とモノマー水溶液(2-ヒドロキシエチルメタクリレート, ノナエチレングリコールジメタクリレート, テトラキスヒドロキシメチルホスホニウムクロリド)から成るポリマーゲル線量計を作製し、線照射による白濁化挙動を報告してきた。本研究では、作製したポリマーゲル線量計に放射線医学総合研究所のHIMACを利用して炭素(290MeV/u)を照射し、その白濁化挙動を吸光度及びスキャン画像データから評価した。水を満たした容器中に炭素線と直交するように配置して照射したサンプルの吸光度は、ブラッグピーク(水中14.9cm)付近で極大を示した。線量率を0.4から6.7Gy/minの範囲で照射した結果、線量率の増加に伴い吸光度は減少した。これは、線量率増加にともない低分子量ポリマーが生成し、散乱光強度が低下したためと考えられる。また、炭素線と平行に配置して照射したサンプルの画像データをフラットスキャナにより取得した。得られたRGB値から吸光度を算出した結果、ブラッグピーク付近で吸光度は極大を示した。このように重粒子線に対するポリマーゲル線量計の白濁度合い、及び2次元の線量分布を簡便に評価できることが分かった。
廣木 章博; 山下 真一*; 木村 敦; 長澤 尚胤; 田口 光正
no journal, ,
作製したポリマーゲル線量計(2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ノナエチレングリコールジメタクリレート、テトラキスヒドロキシメチルホスホニウムクロリド、放射線架橋ヒドロキシプロピルセルロースゲルから成るゲル材料)に290MeV/uの炭素線を照射した結果、ゲル材料の吸光度(紫外可視分光光度計で測定した値)は、10Gyまでの線量増加に伴い増加した。線量に対する吸光度の増分は、約0.007Abs./Gyを示し、線照射と比較して1/10程度であった。フラットスキャナを用いて得た画像のRGB値も線量増加に伴い増加することが分かった。RGB値から見積もった線量の分布は、放射線治療で用いられている一般的なガフクロミックフィルムの線量分布とほぼ一致した。したがって、作製したポリマーゲル線量計は、重粒子線治療での線量評価に応用可能であることが示唆された。
田口 光正; 廣木 章博; 高岡 登志仁*; 小山 雄大*; 黒岩 広樹*; 小宅 勝*
no journal, ,
高度放射線治療法では、がん患部に集中的に線量を付与することが可能になってきたため、線量の空間分布計測がより重要となってきている。これまで、天然高分子由来のヒドロキシプロピルセルロースへの放射線橋かけにより作製したゲル材料にモノマーを添加した新規ゲル線量計を作製してきた。そこで、ものづくりのノウハウを有する柴田合成等と地域コンソーシアムを形成し、ゲル線量計の実用化に向けた開発を進めた。原子力機構で開発したレシピに基づき、柴田合成にてゲル線量計を作製した。患者を模擬したファントムにゲル線量計を貼り付け、治療用X線を照射し、線量に比例する吸光度の体表面での二次元分布が評価可能であることを確認した。さらに、板状のゲル線量計を積層したものに、360方向からX線を照射することで、白濁成分の三次元分布の可視化に成功した。